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「紫音さまぁぁぁ!」
今日も朝から中等科の女の子達の黄色い歓声が、学校中に響き渡る。
「紫音さまぁ!おはようございますぅ!」
「あの、あたしお姉さまのためにお弁当作ってきたんですぅ。食べてくださぁい!」
女の子達はみな同じように頬を赤らめ、さほど変わらぬ身長のあたしを上目遣いで見ている。
これが女子校特有の「お姉様」と可愛い「妹達」の光景である。
中には声をかけることも出来ない内気な妹達もいるのだけれど。
そしてこの黄色い歓声を浴びることも、あたしの毎日の日課と言っても過言ではない。
とは言え、あたしはレズではない。
あたしの本音を言えば――
「紫音さまぁ?お姉さまぁ?毎日毎日朝から晩まで、ウザ過ぎ!!あたしは女よ!!男が好きに決まってんでしょ!!!!」
なのだが、仮にもあたしは理事長の孫。
万札万札!
こいつらは、金のなる木だぁぁぁ!
と言うことで「おはよう。今日も一日、勉学に花嫁修業に努めましょうね」と、紫音ちゃんスマイルをプレゼント。
「きゃあ―――ッ!お姉さまに微笑んでいただいたわぁぁぁ!」
「はいっっ!今日もお姉さまの奥さまになるために頑張りますぅぅぅ」
すると彼女達は、真剣に涙を浮かべて喜ぶのである。
可愛いと言えば可愛いのだが、毎日こうだと疲れるわけで。
とりあえず、あたしはこの子達の前を通り過ぎるまでなんとか笑顔を保つのだが。
そして高等科の校舎に、一歩足を踏み入れると子悪魔紫音ちゃんに早変わり。
「紫音さまぁぁぁぁ」
ギクッ!
突然聞こえてきた声に、「高等科に中等科がいるはずないのに」なんて思いながらも、あたしは慌てて笑顔を作った。
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