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声のしたほうへニッコリ微笑みながら振り向くと――
「晶ぁ!」
「ふふふ」
あたしの目の前に現れたのは悪友の綾小路 晶だった。
「勘弁してよね!」
あたしは相手が晶だとわかると、一気に顔を歪め晶をムッと睨んだ。
だけど晶は気にすることなく言葉を続ける。
「毎日ご苦労なことねぇ」
自分なら無理!お手上げ!とばかりに溜息混じりに呟く。
「モテる女は辛いわぁ」
もちろん負け惜しみ。
その位言わないとマジで凹んでしまう。
「女にモテてもねぇ?男日照りの紫音ちゃん」
ギクッ!
痛いところを突かれてしまった……と言うか。
「あのね、人聞き悪い言い方止めてくれる?あたしはこれでも立派なバージンよ!!」
キャハハと笑う晶。
どっちにしろ、あたしは馬鹿にされる運命なのだ。
これじゃ『子悪魔紫音ちゃん』じゃなくて『いぢられ紫音ちゃん』じゃん。
「そういえば、昨日の夢はどうだったの?イケメン王子様は登場した?」
髪をかきあげながら、意地悪く笑う晶。
あたしをいぢって楽しんでるみたい。
悔しいけど『いぢられ紫音ちゃん』だから仕方ないっか。
「うん。これで一週間連チャンだよ」
あたしは今朝見た夢の内容を思い出すだけで赤面状態。
ヤバい、またいぢられちゃうよ……なんてあたしの心配を余所に、晶は余り興味がないみたい。
「へぇ、また会えたらいいね」の一言で終わったんだもん。
それはそれで、ちょっぴり淋しいんだけど。
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