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晶のせいでまたアイツが頭から離れない。
まぁ、晶が言わなくても頭の中はアイツのことでいっぱいなのは言うまでもないけど。
累(るい)―――
アイツがあたしの中を占領する。
勝手に夢の中まで現れて、今も王子様気取りで暴れてる。
切れ長の瞳であたしを見つめ、そっとあたしの髪に触れる。
その手はあたしの耳元まで下りてきて――
「――…‥音、紫音!」
「はっ!!」
ヤバい。
妄想の世界にトリップしちゃった!
「もぅ!どうせ累のことでも考えてたんでしょ?」
晶は呆れ顔で欠伸をしながらあたしを見ている。
見透かされてる!?
「そっ、そんなことないよ」
胸の前で懸命に両手を振り否定したけど、これまた吃ったために説得力はない。
「そんなに気になるなら捜し出せばいいじゃない」
晶はあたしの言葉をまるっきり信じてないようで、腰まであるサラサラな黒髪をかきあげながら言った。
キレイだなぁ――
そんな晶にあたしは見とれていた。
晶は綾小路財閥の令嬢。
ホテルは全国に120ヶ所、レストランは200店舗もあり、財政界でも名が知られている程のイイとこのお嬢様。
育ちも良ければ容姿も良くて。
肌は色白の玉子肌。
小顔にも関わらず、パッチリ二重の大きな瞳。
プルルンとした口唇。
サラサラの長い黒髪に、170㌢はある長身。
バスト80、ウエスト56、ヒップ86のダイナマイトバディ。
神様の辞書には『平等』という文字はないらしい。
だから晶もあたし同様に中等科の女の子達に人気があるのだが、そのことに全く関心を示さないため、女の子達は物陰からそっと晶を見つめることしか出来ないのだ。
やっぱり本物のお嬢様は違うね。
それに比べ……
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