2261人が本棚に入れています
本棚に追加
―休日―
桜が咲いたから、見に行こうと誘われた。
春の装いの俺。今年は、ちょい悪テイストに仕上げようと企んでいる。
中年ならではのお洒落も、捨てたもんじゃないんだぞ?
約束の時間よりも早く、桜の木の下に着いた。
たしかに見事だな。
花見客もチラホラいる。ここは穴場だから、人でごった返す事はあまりない。
青い空に白い雲が少し。そして桜の花。
ビバ・日本だな。
「待った?」
花を見上げる俺に、声を掛ける女性が一人。
「いや。時間ちょうどだろ?」
俺はゆっくりそちらを向く。
「春菜はまだかしら?」
……おぉ!ずいぶんとまた……。
「痩せたな!」
その言葉に、誇らしげな顔になる幸子。
「でしょ?…それより、春菜は?」
「春菜はキャンセルだ」
春菜は今、俺とマブダチ…みたいなものらしい。春菜から言われた。
俺が、言葉足らずに離婚してしまった事に悔いているのを、春菜には言ってやった。
《チャンス作ってやったんだから、ちゃんとしてよ!》
そんなメールに、親子の変な壁は感じない。親であり、一人の人間として付き合える。
何だか、いい関係になれていると思うよ。
最初のコメントを投稿しよう!