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結婚生活、21年。
若くして結婚した俺……。いや、僕?違うな。私か?
まぁ、俺でいいか。
とにかく俺は、24歳で結婚をして、今は45歳になった。
あと5年で、じいさんと呼ぶかどうするか迷う歳になる。
「ちょっと!お父さん!早く出てよね!新聞なら茶の間で読んでよ!」
朝の有意義なトイレタイムを邪魔するこの声の主は、我が一人娘の春菜だ。
俺の朝の日課を邪魔してくれる。この邪魔をされる事も、日課になっているのだが。
「すまんな」
毎朝繰り返すこの言葉。
トイレから新聞片手にリビングに入る。
昔は『パパ!』なんて、かわいい笑顔ですり寄って来た春菜。
それも18歳の、新社会人になった。早いものだ。
なかなか子供が出来なくて、やっと授かった大事な一人娘なんだがなぁ。
「まったく、毎朝同じこと言わせないでよね」
食卓につきながら、汚いものを見るような目でこちらを睨んでいる。成長というものは、時に残酷だ。
「ちょっと!?それ、さっきトイレに持ち込んだやつじゃない!やめてよ!汚いな!」
新聞を広げながら飯を食おうとすると、春菜がヒステリックにわめき出す。
「あなた。毎朝同じことしないでよ。朝から疲れるわ」
そう言ったのは、嫁の幸子だ。
俺はこんなに女が強い世界で、一人で戦う……いや、違うな。
そうだな。ライオンの檻に入れられた、か弱いウサギちゃんだ。
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