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「言って来まーす」
そう言いながら、颯爽と出て行く春菜の格好を見て、軽くめまいがする。
「何だあれは。パンツが見えそうじゃないか!」
若者向けの、洋服屋の店員になった春菜。
俺からして見たら、あんな格好をして外を歩くなんて……言語道断!!変な男が寄るじゃないか!
「あれが今の流行よ。いいじゃない。かわいいし。私もあんな格好がしたいわ」
うっとりする幸子に、げんなりした。
返事もする気が失せた俺を気にもせず『ちょっと休憩』と、テレビの前に寝転がった。
その姿は、まさにトド、ブタ、カバ。
こんな容姿になった幸子だが、結婚当初は全然違ったんだ。細くてかわいくて、仲間内では自慢の嫁だった。
それがだ。
今じゃこんなに育って、ピチピチのジーンズにヨレヨレのトレーナー。
もはや女ではない。
「あなた。どこか出掛けて来たら?せっかくの代休なんだから」
寝転がり、テレビを見たままで言う。
「……あぁ」
休みだから寝ていたいんだ。
それを叩き起こして、飯を無理やり食わせ、とどめに出掛けろか。
まったく。少しは残業で疲れきった体を、ゆっくり休ませてやろうなんて思わないのか。
しかし、ここで言い返して喧嘩になるのもおっくうだ。俺はおとなしく出掛けることにした。
出掛ける素振りを見せた途端、すごい勢いで『帰りは何時?』なんて聞いてきた。
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