中年革命

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―春― いつもの満員電車に揺られ。 いつもの道を歩き、いつもの会社。いつもの席。 「おはよう!」 いつものように、元気に挨拶をかわす。 俺の自宅謹慎は、他の人より少し長い正月休み。そんな感じだった。 佐藤の訴え、現場の目撃者の証言により、俺は情状酌量。 立花がクビになったらしい。 後日、五十嵐社長自ら、我が家に謝罪に来てくれてさ。土下座までしてくれた。 思ったよりも、人情のある人だったみたいだ。しかも、春菜と変わらない歳の娘がいるとかで。 それもあって、俺の気持ちがよくわかると言ってくれた。 俺はそれでも、役職を下りたいと井上社長に申し出た。 結論? 俺の申し出は却下だ。 イベントに支障も無かったし……何より、あの一件で井上・五十嵐、両社長に前以上に激しく気に入られてしまった。 雨降って何とやら…だな。 「田中さぁん。そのネクタイ、ダサいですよぉ」 佐藤も元気になって、少しだけキャラも変わった。 毎日田中をおちょくり、楽しんでいる。田中はその度に、嬉しそうに笑ったりなんかしてな。 佐藤は時々、辛そうな顔をしている事はある。だけどその苦しみを完全に乗り越えたら、佐藤と田中は幸せになれる……気がする。
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