中年革命

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「じゃあ……」 「少し、歩こうか!」 帰ると言いそうなのを、何となく感じた。 「当たり前じゃない。せっかく来たのに、帰ると思ったの?」 意外にも、笑いかけられ。 何だか拍子抜けした。 離婚してから…まともに会ったのは、はじめてのような気がする。 今はまだ、ぽっちゃりぐらいだが。それでも新鮮に思うのは、出会った時の幸子を思い出すからかな。 「うまくやってるか?」 武田くんが変えたのか…と思ったら、そんな言葉が口をついた。 「何がよ」 つ、冷たい……。 「な、何って……いろいろだよ」 ベンチが目に入った。ちょうどよく、向かいに桜の木もある。 「ちょっと座るか」 ベンチを指差し、幸子を促す。 「そうね」 日差しが暖かくて、ホッとする。一人分の距離を置き、幸子は俺の横に座った。 「……あの、いつかの…武田くん?だっけ。順調か?」 この約4ヶ月、ずっと考えていた事がある。 俺の望む、本当の幸せとは何か。どうして離婚してしまったのか。 どうして話す事を諦めてしまったのか。 桜とちゃんと話せたのは、桜が俺を受け入れるのをわかっていたからじゃないかな……と。
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