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「わからん」
僕は不本意ながらに出掛けるんですよ。という意味を込めて、素っ気無く返事をした。
「それじゃ、ご飯支度に困るじゃない」
何だこいつは。
たかが一人分多く作ろうが、余ったらお前が食うんだろ。だからそんなに育ったんだろ?
「外で食べる。晩飯も」
これでいいんだろ?
専業主婦は気楽でいいな。三食昼寝つき。旦那が邪魔なら追い出してな。思う存分ゴロゴロしていればいいさ。
「あぁ。あと、あなたのパンツ買って来たら?最近あなた太ったから、ワンサイズ大きくしなさいよ」
デブに言われたくない。
お前よりはマシだ。
そんな言葉を飲み込んで『そうだな』と返事をして、さっさと家を出た。
ブラブラと歩きながら、向かう先はパチンコ屋。ここが俺の心のオアシス。
お気に入りのスロット台と向かい合う。そして、今日もよろしくな……と、心の中で挨拶をする。
その挨拶が良かったのか、低資金で当たりを引いた。
今日は調子がいいみたいだ。コンスタントに当たりを重ねる。
「おっと」
コインが手から一枚こぼれ、足元に落ちた。
それを拾おうと屈むと、ミニスカートから伸びた足が、サッと逆方向に向けられた。
「失礼」
顔を上げて詫びると、隣の女性はあからさまに嫌な顔をした。
年代は20歳前半ってとこか。お世辞にも可愛いとは言えないな。俺の娘の方が、一万倍可愛い。
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