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何だかんだで、結構な小遣いになってしまった。
俺はコンビニATMに立ち寄り、勝った分をヘソクリ専用口座にぶち込んでやった。
この口座は、幸子にはシークレット。
俺のささやかな楽しみ。
こうやって手にしたあぶく銭や余った小遣いをチマチマ貯める事。
またフラフラ歩きながら、暗い道を家路に着く。
いつからだろうな。家族の中で、自分が『邪魔な存在』だと感じるようになったのは。
必要とされていないわけではないい。俺がいないと生活費に困るからな。
亭主元気で留守がいい。そう思われているだろう。
「ただいま」
そう言って玄関を開けても、新婚時代のように迎えに出てくる事はない。
出てきたところで、何か感じるわけでもない。
リビングに入ると、幸子と春菜がテレビドラマに釘付けで、俺が帰った事には興味もないらしい。
黙って風呂に向かい、服を脱ぎ捨てる。ほぼ一日中、パチンコ屋に居た。煙草の臭いが、これでもかとついた服。
ため息と共に入浴だ。
自分の中年体型を凝視し、さらに溜め息をつく。みっともないな。
寝る前に、昔の写真を引っ張り出した。俺も昔は、今で言う『イケメン』の部類に居たんだよな。
そうそう。幸子とお似合いのカップルで、うらやましがられてなぁ……。
今でもお似合いではあるか。
油断しきった、中年デブ夫婦。
俺の望んでいた生活は、こんなに惨めなものじゃなかったのになぁ。
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