第1章 wipe out

6/32
前へ
/218ページ
次へ
レノアスは身震いして、首に巻いたマフラーを体に引き寄せる。 「なぁソフィ、やっぱりここで飯食うのは早すぎるって。シーズン的に 風邪ひくぞ?」 「問題ない。私たちはそれほど脆弱ではない」 購買で買ったパンに目を落としたまま、ソフィが無表情に答えた。 「脆弱って……」 お前に俺たちの何がわかる!? なんてことは言わないが、いくら脆弱じゃなくとも寒いものは寒い。 そんなレノアスの心を読み取ったのか、ソフィが心なしか無表情のなかにも残念そうな感じを織り混ぜて、顔を上げて呟く 「嫌?……なら屋内に戻る。」 「いや、別に嫌とかそういうことじゃなくてな…… まぁとりあえず、もう一枚上着を持ってきた方がいいな。マフラーだけじゃなくて」 最近になってやっと、割かし自分から意見を言うようになってきたソフィなのだ。 レノアスとしてはこのままもっと我を出してくれた方が好ましいし、そのほうがソフィにとっても過ごしやすいんじゃないかと思う。 (寒さぐらいいくらでも我慢してやるさ) 「そうする。……ありがとう」 「別に、俺のやりたいようにしてるだけだよ。」 隣でリヴァスがニヤニヤと爽やかな笑顔を見せているが、それにいちいちリアクションを取るのも最近では少なくなってきた。 レノアスは鼻下までぎゅっとマフラーを上げて、何だよ?的な視線だけを返しておく。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4005人が本棚に入れています
本棚に追加