第2章 past memories

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「失礼します。」 ノックするのも面倒だったので、そうとだけ言ってレノアスは支部長室に乗り込んだ。 「まだ入って良いとは言ってないんだが」 「まぁんなことは置いといて、何がどうなったのか教えてくれ。」 明らかに不服な表情で口を開きかけたクリスだったが、声が出るよりも先に再び扉が開いた。 「ただいま戻りました。」 こちらもノックは無し。だがクリスの憤怒はそこではなく別のところに向いているに間違いないだろう。 何しろ入ってきたのは倉庫地帯爆破犯、No.В ジェイドである。 しかし、そこで怒鳴り声をあげなかったのは単にクリスが自己抑制の境地に達したというわけではない。 ジェイドはボロボロだった。 黒いコートは穴だらけで、所々出血が確認できる。 ノーマルな奴が戦闘の場においてこうなるのなら納得してもいい。 だが、この赤髪は『空歩の紅蓮』の戦名をもつ炎のブレイカーの使い手なのだ。 普通に殺ろうとして殺れるような者ではない。 「あっ、レノアスも居たんだ。お疲れー」 「おう、お疲れー……じゃなくて何だお前 ボロクソだな、何があったんだよ?」 この怪我をしながらも何故か満足顔のジェイドを気味悪く思いながらも、レノアスは質疑応答に移った。
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