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昔は飲みに行くのは、必ず友達と大勢で行った。
バカな飲み方をして、出入り禁止になった店も数知れず。
それが年々、メンバーが寿脱退をして。今じゃ、一人で飲むのが当たり前になっている。
夜の飲み屋街を、早足で通り抜ける。目的の店は、こじんまりとしたバー。
エンゼルス・キッスと書かれた扉を静かに開けた。
「いらっしゃい……おぉ!春ちゃん!久し振りだな!」
可愛らしい店に名前とは真逆な、強面のマスターが私を迎える。
薄暗い店内なのに、常にサングラスを着用。そして髭を生やしている。ちなみに、アイパーだ。
どこから見ても、エンゼルス・キッスなんて店名を付けるキャラには見えない。
「久し振りにね、マスターの顔が見たくなったの」
カウンターの一番奥に腰掛ける。そこが私の特等席だ。
「また今日は一段とお綺麗で」
おしぼりを差し出しながら、いつものお世辞を言う。
そして私の前に、鮮やかなブルーのカクテルを置いた。
このマスター。いつも一杯目は、その日の私が纏(まと)う色をカクテルで表現してくれる。
私はいつも、どこかに寂しい色を持っているんだって。
だから、大体……
このブルーのカクテルが出てくる。
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