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「まったく……。春ちゃん美人なんだから、もっといい恋しろよなぁ」
このマスターって、本当は占い師とかじゃないの?って思っちゃう。
「本当にね。でもさ、29になったら……何かがわからくなっちゃってね」
このマスターの前だけ。私は素直になれる。傷付く度に話を聞いてもらって、毒抜きをして帰るのがいつものパターン。
「29なら、女盛りだな。よし!祝いのカクテル作ってやるよ」
そう言って、マスターがやる気を見せたと同時。
カラン……という音と共に、扉が開いた。
「いやぁ!ちょっと聞いてよ!あのさ……」
やけに元気なテンションだ。
「うぉ!こんな早くに客が居る!珍しいな、マスター!」
出来上がってるのか?
その男と目が合ったから、とりあえず会釈しておいた。
25歳前後ってとこかな?
特別かっこ良くはないけど、笑顔が可愛いのが印象的。
その男はマスターの正面に座り、車のものと思われる話を一生懸命にしている。
マスターもノリノリで、その男の話に食い付いていた。
私はカヤの外ってわけだけど、少年のような二人を見ていたら、何だかほのぼのした気持ちになる。
私はブルーのカクテルを口にしながら、ただ二人を眺めていた。
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