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私のグラスが空になりそうなのを、マスターは敏感に察知。
そこら辺がプロなんだろう。
「あ!春ちゃんに祝いカクテル……ちょっと待てよー」
手際よく、流れるようにカクテルを作る姿。
粋なマスターは、私の何をイメージしてくれるもだろう。
「はい。出来上がり!」
「わっ!珍しい。私にピンク?」
目の前に出されたそれは、今まで一度もイメージされなかった色。
「春ちゃんに足りない色だよ」
ニヤニヤと笑うマスターに、私は苦笑いで応える。的確すぎて嫌になるわ。
でも……
「おいしい」
私はこのピンク色を、再び手にする事はできるのかな。
「マスター。俺には?」
「純は自分で作れよ。サービスは、かわいこちゃんだけだ」
純と呼ばれた男は渋々立ち上がり、カウンターの中に入って行く。
「カクテル作れるの?」
思わず聞いてしまったのは、このバーの雰囲気の良さがあったからだと思う。
「多少ね。何か作ろうか?」
そう言いながら、カウンターの下を探る純。
「頼もうかな」
「了解。……お。あったあった。これが無いと、元気出ないんだよねぇ」
カウンターの下から取り出したチョコを一粒口に入れ、私とマスターにウインクした。
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