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「ここでバイトするか?俺より作れるじゃん」
マスターは小さなカゴに、一口チョコを山盛りにしながら言う。
「んー?種類作れたって、オーソドックスなオーダーしかないじゃん。それに、ありきたりのイメージしかしてやれないもん」
純は再び、カウンターから元居た席へと移る。綺麗な朝焼けを手に。
そんな純の前に、山盛りのチョコ。
「……つまみ?」
カクテルにチョコの組み合わせに、見てるだけで胸焼けする。
「そうだよ?」
さも、当たり前のように答える。純はチョコを一粒口にしては、包み紙をチマチマと結んで脇に置いていく。
「俺には理解不可能だな!酒にチョコは無理だよなぁ」
マスターは煙草をくわえたまま、苦笑いで純を眺めている。
――やっぱ、この店はいいな。
こんな他愛のないやりとりが、すごく落ち着く。
この店でできた友達も多い。きっと、マスターの接客スタイルもあるのだろう。
みんなを巻き込んで、店全体で下らない話を肴(さかな)に飲む。
だから一人で来ても寂しくない。
「ちょっとトイレ」
立ち上がってみてわかる。自分が多少、酔っている事に。
カクテルって、飲みやすいわりにアルコール度数は高いもんね。
鏡の中の自分を見つめていたら、数人の話し声が聞こえてきた。
どうやら、他の客が来たみたい。
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