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自分の知らない事を知るのは、結構楽しかったりする。
ただ、鮮やかだと思っていたカクテルの名前。その名前から連想する景色や、名付けた人の想い。
酔ってるから。
だからかな。
いつもより、名前の一つ一つに色々想像するのは。
「さて……。そろそろ帰るかな」
時計を見ると、もう深夜1時を過ぎていた。久しぶりに、時間が経つのが早いと感じる。
「また……会える?」
カウンターを出ようとする純に、そんな言葉が勝手に出ていた。
この数時間が、とても楽しかったから。
「ん。毎週来てるから。ここに来たら、会えるよ」
純はニヤッと笑って
「惚れた?」
「なっ!……子供には興味無いけど、カクテルの話が面白かったのよ」
あと、君がチョコを食べる仕草が印象的だっただけ。
純は少し考えた後
「……何歳?」
私は少しためらって
「……29」
しばしの沈黙。
ボックス席の笑い声が響いた。
「案外……おばさんだったんだな」
なっ……。
確かに。確かに若い子から見たら……おばさんかもしれないけど。
それを面と向かって言う?
固まる私に純はチョコを一粒投げた。
「来週来る時、それと同じチョコ買ってきてよ!」
おばさん発言をフォローするわけでもなく、無邪気に笑いながら店を出て行った。
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