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カクテルの話をするときの純は、大人びた顔をする。
だけど、チョコを食べる瞬間は、子供のような顔をするんだ。
「案外、ロマンチストなんだね」
不思議な人。
「男はみんなロマンチスト。女はリアリスト。……女を夢へと誘(いざな)うのが、男の仕事だな」
いつもの私だったら、笑って流すせりふだと思うの。
だけど今は、それに同意している。
私、今、夢の中に居るみたいだから。
現実は、辛い事がいっぱいある。
夢はいつも心地好い。
だからこんなにも、純との時間が楽しいのだろう。
出されるカクテルと、純の口に消えるチョコ。その数が増える事だけが、時間の経過を示している。
ふと目にした時計。
もう0時を回る。
今夜もまた、午前1時で夢は終わってしまうのだろうか。
少しだけ現実が見えた私の前に、スノー・スタイルの紅いカクテルが置かれた。
「スノー・スタイルって、日本だけに通用するカクテル用語なんだよ」
また、大人びた顔をする。
「スノー・スタイルは、グラニュー糖をフチにまぶす事。塩でやる場合は【塩のスノー・スタイル】っつーの。これはただの、スノー・スタイル」
と言うことは、このフチにあるのはグラニュー糖ね?
お酒に甘いものは合わないと思ってたから。何だか意外だった。
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