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私は……。
身を乗り出してくる純に、ゆっくりと近付く。
純は、ニコリともしない。だから、私も笑わない。
どうして吸い寄せられるのかな。
やっぱ、酔ったのかな。
純の手が、私に向かって伸びてくる。
その手に捕まる寸前。
「試す」
私の唇が小さく動く。
それとほぼ同時に、引き寄せられた。
そして、唇が重なる。
──君のキスは、甘いミルクチョコレートの味がするよ。
チョコはダメなのに。もう一粒、もう一粒って……食べ過ぎちゃうの、わかってたのに。
ほらね。
私は今まで我慢していた、チョコへの情熱に負けたように。
そのチョコの味を、もっともっとと欲するの。
やっと、唇が離れた。
まだまだ足りないの?私も純も。
「一緒に帰ろう?」
きっと、この言葉だけでわかるはず。この後に私が求めるものを。
私は、何がしたいんだろう。
そんな思いが、フッと頭に浮かぶ。また、虚しくなるだけじゃないの?
「明日の仕事は?」
唇は離れても、手が繋がっている。それだけで、私の理性は負けてしまうの。
「休み」
「じゃあ、ゆっくりできるな」
再び軽くキスをして、私達はエンゼルス・キッスを後にする。
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