13384人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
引き締まった体の綺麗な曲線。
男の体を見てうっとりするなんて、私もいよいよ【おばさん】の領域に踏み込んだのかな。
「……さすがに、帰ろうかな」
わざと時計に視線を移す。
ほら。見てよ。
12時間以上も、裸で眠っていたんだよ。夢を見ていたんだよ。
まだ……今よりもずっと純粋だった、遠い昔のような時間だったわ。
「帰るの?」
また……だ。
このままずっと居るのが当たり前のように、不思議そうに言った。
「うん。仕事、やらなきゃいけないのあるんだ」
なんて、嘘。
今帰らなきゃ、帰るタイミングを逃しそうで怖かった。
「なんだぁ。メシ行きたかったのに」
一度枕に顔を押し付けてから、ベッドから手を伸ばして煙草を手に取る。
私の近くに純の顔がある。その距離に、不覚にもドキドキした。
昨夜、あんなにも近くに居たのに。
「ま、また、暇なときに構ってあげるから」
あくまでも暇潰し。遊びなんだよ……と、自分に言い聞かせる。
「なんだよ。ガキ扱いしてね?」
ガキかもね。
でもさ、ガキの方が純粋じゃない?そこが魅力的なんだよ。
無駄にキラキラして見える純を直視できなくて、純に背を向ける。
私がおばさんだから、若さが眩しく見えるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!