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私は、純に連絡はしなかった。
今までもそうだった。
ともに朝を迎えたからと言って、急にベタベタするような事はしなかったし、相手からすぐに連絡が来たから。
気を抜くと思い出す、あの日の夜。まだ一週間しか経っていないのを、随分と遠くに感じているのを寂しく思う。
これは……【好き】もしくは【好きになりかけている】と言う状態なのだろうか。
強烈に惹かれた理由。
おそらく、恋人のような時間を与えてくれるから。……そう思ったら、何が【気持ち】なのかわからない。
ただ、今さっき受けたメールに、心底嫌気がさしているのだけは確かだ。
≪今週はいつ会える?≫
飛び付くように見た受信ボックス。差出人の【原田】と言う文字を見て、ため息が出た。
<もう、会う気はない>
そう送信して、携帯を閉じた。
原田とは、会えばすぐにホテル。会話らしい会話もなく、ただ背中を向けられるだけじゃない。
最初の頃は、とても不器用そうに私を誘った。それが初々しく私の目に映り、かわいいな……と思った事もある。
でも、人の慣れというものは残酷で。
当たり前のように、ホテルに車を走らせる原田には、何の魅力も感じられなくなっていた。
それでも私は、少しでも寂しさを埋めたかった。
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