寂しくて

2/8

13384人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
私は、純に連絡はしなかった。 今までもそうだった。 ともに朝を迎えたからと言って、急にベタベタするような事はしなかったし、相手からすぐに連絡が来たから。 気を抜くと思い出す、あの日の夜。まだ一週間しか経っていないのを、随分と遠くに感じているのを寂しく思う。 これは……【好き】もしくは【好きになりかけている】と言う状態なのだろうか。 強烈に惹かれた理由。 おそらく、恋人のような時間を与えてくれるから。……そう思ったら、何が【気持ち】なのかわからない。 ただ、今さっき受けたメールに、心底嫌気がさしているのだけは確かだ。 ≪今週はいつ会える?≫ 飛び付くように見た受信ボックス。差出人の【原田】と言う文字を見て、ため息が出た。 <もう、会う気はない> そう送信して、携帯を閉じた。 原田とは、会えばすぐにホテル。会話らしい会話もなく、ただ背中を向けられるだけじゃない。 最初の頃は、とても不器用そうに私を誘った。それが初々しく私の目に映り、かわいいな……と思った事もある。 でも、人の慣れというものは残酷で。 当たり前のように、ホテルに車を走らせる原田には、何の魅力も感じられなくなっていた。 それでも私は、少しでも寂しさを埋めたかった。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13384人が本棚に入れています
本棚に追加