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コーヒーを一口飲んで、夭はまた口を開く。
「事態は深刻だね。資料を捲って。それは政府から送られてきた文だ」
そこにはびっしりと文字が並んでいた。内容は、
『この戦乱の世を終わらせたい』とのことだった。だからこの有力な総合中央研究所に協力を願う、と。要は政府も兵器を欲しているのだ。他のところよりも強い兵器を。費用はいくらでも出すらしい。
「零は、きっと何にも負けないだろう」
「でも夭さん、それでいいの?零は……」
「凜君の言う通り、起動させた零は」
可哀相だろう
凜(リン)は背の低い、幼い顔をした女の子だ。彼女は視線を落として静かになった。長い睫毛が垂れる。
「凜、気持ちはみんな分かる。けど、世界はこのままではいけない」
「えぇ、秦の言うとおりね。凜、私たちがいる間は私たちが零を助けましょう」
「……はい、そうですね」
意を決して凜は顔をあげた。全員一致。起動決定だ。
「あ!お茶菓子あるよ!」
「………夭……っ」
こうして空気は和らいでいくのだった。
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