短編その参:シャドウダンサー

7/26
前へ
/61ページ
次へ
「で、ここだ」 ひたすらに白い通路を真っ直ぐ歩き続け、漸く辿り着いた先は行き止まり。 通路の果て。そこには他よりも一際大きな扉が取り付けられていた。 「絶対不可侵の果て……。S・A・Dの施設に入ってから、ただひたすら真っ直ぐ前を目指すと辿り着くこの扉。いかなる魔法手段を用いても、突破することは出来ない」 「厳重セキュリティなわけか……。ってことは、ここが最大にして最重要な部屋?」 「そうとも言えるし、そうとも言えないな。どちらかと言えば、中に入っている人間が原因なのだが」 「?」 「まあいい。入ればわかることだ。私だ、ミリアだ。解除してくれ」 ミリアが声質は変えず、ただ声量のみを3倍ほど大きくさせて、扉に向かって叫んだ。 恐らく風の魔法を応用して、声の大きさを調整したのだろう。 自ら声を張り上げるような真似はしないのが彼女である。 そうして数秒後。果たしてそれは、ギィと音を立てて、ゆっくりと開かれた。 眼前に広がる、大きな部屋。 何かの研究部屋かと思っていたのだが、そんなことはなく、その内装は単なる一般市民の生活部屋それそのものであり―― 「やあ、君か。待っていたよ、ミリア・アウストラ」 大理石のテーブル、人間4人は並んで腰掛けられそうな赤色のソファー。 その中心に、優雅にもティーカップを左手に持ちながら腰掛けていたのは。 「……アルフレッド」 「ふふ、『初めまして』、かな?イチノセ レイくん」 かつて死闘を繰り広げた最強。 アルフレッド・アッシュフォードが、そこにいた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1158人が本棚に入れています
本棚に追加