短編その壱:剥離

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朝になると、まず最初にするのはランニング。 自室を出て、白い壁、白い天井、白い床、全てが白に染まった廊下を歩き、外に向かう。 上履きから靴に履き替えた俺は、その場で二三歩足を動かし、状態を確かめる。 ふと空を見上げてみれば、雲ひとつ無い快晴。 こういう日は照りつける太陽が容赦なく体力を奪うので始末が悪い。 5階建ての巨大な建物に、広いグラウンド。 ぱっと見、ここは中学や高校の校舎のような作りになっている。 しかし、その周囲が10メートルの高さの鉄壁で覆われていて、出入り口はカードキーがないと開かない、なんて校舎はどこを探してもここだけであろう。 一歩ここから外に出れば、周囲は鬱蒼と生い茂った木々で囲まれている。 どこかの山奥に、ひっそりと建てられた『養育施設』。 それがここだ。 「はぁ……、はぁ……」 グラウンドの内週をぐるぐると駆けながら、俺は明日のことについて考えていた。 俺たちの教育係に当たる男が言っていた。 明日はいよいよ最終試験。 これに合格すれば、晴れて組織に必要な人材として、俺たちは迎えられる。 不合格になった時は―― 「はぁ……はぁ……」 よそう。 考えても仕方ない。 どうせ俺には、合格するしか選択肢が無いのだから。
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