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ミリアはアルフレッドの賛辞にも、言われて当然と言わんばかりの態度で、それに対しては特にコメントもせず、『それでだな』と言葉を続けた。
「私が推薦したいと言う人物は――、この一ノ瀬 玲と言う少年だ」
……やっぱりか、やっぱりそうなのか。ミリア・アウストラ。
まさに自信満々、当然至極と言った表情で、右手を広げて俺を示す彼女。
対し、アルフレッド。
表情それそのものは相変わらず『固定』された柔和な笑みのままだが、俺はその瞳がほんの一瞬『はあ?』と言った感じに見開かれたのを見逃さない。
流石はミリア。我らがミリア。
Mr.Aの固定すら突破してみせた。凄くねえ。
「……ふむ」
しかし、だ。
俺はてっきり呆れられること間違いなし、却下、門前払いとなるだろうと思っていたのだが、アルフレッドは左手を顎に当てて、少し真剣そうな風を装った。
「成る程。いきなりで少しびっくりはしたが……、こう見てみると別段全く素質がないと言うわけではさそうだな」
死んでしまった方の僕は君と対峙した経験があるだろうから、彼から話を聞ければ尚良かったんだけれどね、と。
そう冗談めかしてアルフレッドが笑う。
って、待て。素質がないことはないって……、素質があるってことなのか?俺に?
んな、あほな。
「だろう?流石はMr.A。やはり見る目はあるじゃないか。ならば――」
「ああ。彼を総隊長には出来ない」
「……なに?」
ピクリと、彼女の眉が上下に動いた。
同時、ほんの僅か、ほんの一瞬、部屋の中を風が舞う。
まずい。これはミリアの怒りパラメーターが上昇している証拠だ。相変わらずキレやすい若者代表、それに恥じないキレやすさじゃないか、ミリア。勘弁してくれ。
「どういうことだ、アルフレッド。素質があるのに、何故却下する?」
「素質があるからだよ、アウストラ。わかってないね。素質があるということは、現在はそれが開花していないと言うことだ。そんな不完全な人間を総隊長なんてポジションにおけるわけがないだろう」
……ケチの付けようもないほどに正論だ。
まさしく、ミスターパーフェクト、Mr.Aと言ったところか。
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