短編その参:シャドウダンサー

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「……ぬぅ」 低く、悔しそうに唸り声を上げ、ぎゅっと唇を噛むミリア。 言い返す言葉が見つからないのだろう。なまじ頭がいいからこそ、全く理にかなっていない感情オンリーの文句は付けられない。 ……行動自体は、自身の感情に滅茶苦茶素直であることはおいといて、だが。 「理解いただけたかい、ミリアくん。と言うわけで彼は――」 「ならば」 「ん?」 「ならば、その総隊長候補とやらをここに連れてこい。私自身、そいつが本当にレイよりも総隊長に相応しいのか判断させてもらう。それだけの権利が私にはあるはずだ」 いや、ない。断じて、ない。 お前はそもそもS・A・Dの誘いを蹴って、俺の住んでいるアパートにやって来たのではなかったか。 それをいきなりやって来て権限を主張するなどと、都合が良すぎるにも程がある。 まあ、ミリアのことなので、今更なんとも思わないところ、俺も相当毒されている気がするが。 「……そう、だね。仕方ない」 しかし、アルフレッド。彼女にそんな権限などこれっぽっちも無いにもかかわらず、小さくその首を縦に振り。 「いいだろう。他ならぬミリア・アウストラの要望だ。今、その彼をこの場に呼び寄せることにしよう」 そう言って、胸元から丸く、透き通った手のひら台の物体を取り出し(恐らく、通信機の類なのだろう)、それに向かって声をかけた。
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