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「思い上がるな、小娘」
アストロの、低い、力の込もった声。
それに続いて。
「そーダっ!笑わせんなよ、女ッ!」
「多勢に無勢とはまさにこれだぜ、ギャハハハハッ!」
未だ健在の20近いアストロの『ブラザー』が、一斉にその下品な笑い声を上げた。
「……」
対し、ミリア。
屈辱を感じるでも悔しさを滲ませるでもなく。
ただ、耳障りだと言わんばかりに顔をしかめた。
「ふ……、久しぶりに我がブラザーと意気投合が出来そうだ。感謝をしておくべきかな、アウストラ」
「戯れ言を。弱者が意気がるのは滑稽に見えるぞ、小わっぱ」
その言葉と同時に、ミリアが『両手』でカマイタチを構え、アストロに向かって駆け出す。
「潰してやるよ、ヒャーーーハァーーーッ!」
瞬間、彼女の正面。
アストロとミリアの間に割って入るように、一体の影。
「邪魔だッ!」
一閃。
カマイタチの一太刀にて、それを両断する。
「――鬱陶しい」
次いで、左右。
彼女の両脇へ、挟み込むようにして更に二体。
「エア・プレス」
が、ミリアは動じない。
『鬱陶しい』、その言葉通り、ただ目障りな羽虫を蹴散らすがごとく、超圧縮した空気の塊にて、その二体を地面に押し潰した。
その間、彼女は剣すら振るわない。
視線すら向けず、ただ念じるがだけで、アストロの分身を撃退した。
「――ッ!」
しかし、影達の攻撃はまだ止まない。
再び正面。
今度は4体同時。
「何体来ても同じことッ!」
振るわれる刃。
巻き起こる疾風。
引き裂かれる影四つ。
そして――
「な……ッ!」
『五体目』の、攻撃。
「――……ッ」
正面に意識を集中させてからの、別方向からの闇討ち。
五体目の攻撃は背後より。
ミリアの完全な、意識外からの攻撃。
「貰ったぜぇッ!」
「くぅッ!」
ドスンと、鈍い衝撃音が響き渡る。
ブラザーの飛び蹴りが、見事ミリアの後頭部を捉えた。
「……ッ」
揺れる脳。
ふらつく視界。
一瞬だが、ガクリとミリアの身体がふらつく。
「単純な力勝負では、確かにアストロは勝てない」
「……」
いつの間に新しい紅茶を入れたのか、アルフレッドはティーカップに口をつけながらそう呟いた。
「事実、アストロのブラザーが100体束になったところで、正面からでは彼女には勝てない」
揺れる彼女の身体に、更に三体の影が飛び掛かる。
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