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会場に向かう途中、差し入れでもしようと、ミスドでドーナツを適当に買った
海渡麻里に、ちゃんと芝居を見に来たと、知らせる為と、バイトをサボった事の口止め料として…
「ようこそ!」
会場に着いた早々、聞き覚えのある声がした
海渡麻里がモギリをやっていたのだ
「…おはようございます。盛況そうで何よりで」
「うむ、中々の客入りだ。…まあほとんどが身内なのだがな」
「サクラですか?」
「そういうモノなのだよ、弱小劇団は。少しずつ、本当に少しずつ、見てくれる人を増やすしかないのだよ」
「………」
少し心が打たれた気がした
「さあ、そろそろ開演だ、中に入って、楽しんでいってくれ」
「あぁ…、はい。これ、差し入れです」
「おお、ありがとう」
「じゃあ、頑張って下さい」
そう言って劇場内に入る
中はもう真っ暗だ
三百人入る劇場は、八割方、埋まっていた
劇場内に響き渡る音楽の中、アナウンスが入り込む
『本日は劇団愚人社、第16回講演「ドッペンゲルガ~半年限りの恋人~」に御来場いただき、まことにありがとうございます。お客様に、本日、劇場内での注意事項をお知らせ致します。劇場内での飲食、お煙草はご遠慮下さい。後の掃除が大変です。また、上演中のカメラ撮影は禁止しております。役者がカメラを意識してカメラ目線で芝居をする恐れがあります。最後に携帯電話、ポケベル、たまごっちの電源をお切りするよう、お願いします。以上の事が守れないお客様は…ゴー トゥ ヘル!それでは、まもなく開演です』
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