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海渡麻里は目をパチクリさせて俺を見た
「天使って…この事かね?」
と、持っていたオールドファッションを頭上に掲げ、天使のワッカに見立てた
「それ以外の天使を俺は知りません」
「あぁ、そうだな。………」
長い沈黙があった
多分、戯曲仕立てで考えているのだろう
「…私の考えでは、天使には、何かをする力はないのだ。だから人の前に姿を現す。…そうだ、天使が現れる所には、何かしらハプニングがあるのだ。ならば、天使とは…トラブルメーカー? …それだけなら疫病神と変わらんな。…そうだ、何かを起きるのを良い方向に向けようと、何かを伝えようとしてるのか…いや、待てよ…」
『…スイッチが入ってる、これは止まらないな』
「もし、それが堕天使ならば…」
もう止めないと、一日中しゃべり続けるだろうなあ
「…麻里さん!午後の部が始まりますよ」
「………、はっ!そうだ…すまんな、もう行かなくては。」
「はあ、頑張って下さい。俺は、もう帰ります」
「そうか、では、またな」
と言って、劇場に向かおうと、海渡麻里は立ち上がったが、少し考えた後、
「なあ、その事を聞くためだけに、わざわざバイトを休んで来たのかね?」
「………」
「なあ、それだけなのかね、何か悩みがあるんじゃないのかね」
心を掴まれた気がした
「いいでしょう、別に!どうして、いつも俺に絡んでくるんですか」
海渡麻里は少し困った顔をして
「そりゃあ、君が好きだからだよ。愛おしいと思っているからだ」
ある意味、虚を付かれて、ある意味予想通りの解答に、カーっと頭に血が上る
そして駆け足で逃げ出した
聞きたかった言葉であり、聞きたくない言葉だった
『…俺は』
悔しかった、哀しかった、吐き気がした
『…なんで俺はこんな…』
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