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足がすくみ、その場から立ち去りたくても前へ進めない。
真也は建物の壁に手をついた。
大きく深呼吸をし、自分を落ち着かせた。そして、抜き足で走り始めた。
──あんな光景見ていない
真也はそう必死に自分に言い聞かせながら夢中で走った。
見たことがバレたら自分が殺されるかも知れない。
ただ、恐怖から逃げたかった。
明日の朝になったら公になるであろうあの場所から早く遠ざかりたかった。
同じ道を行く数人の人と何回も目があった。
その人たちは「なんだ?」と言わんばかりの顔をし、真也を見る。
だが、今はそんな他人の目など気にしている場合ではない。
ただ、ただ、ひたすらに自分の家に向かって走り続けた。
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