1.炎の決意

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恐怖により我を忘れたのか鞭を手当たり次第に振り回す男。生き物の様に縦横無尽にしなる鞭はカイトの頬に紅い傷を付けた。 「ははっ……狂ったのか?でもな、もう興味が失せた。……死ね」 頬から滴る血等気にもせず、冷たい笑顔で赤髪の男を見つめるカイト。赤い血の着いた刀を構え、容赦なく胸を貫く。 「ごふっ…まだ死にたくない…死にたくない…じにだぐない…」 刀が胸を貫いた瞬間、突然男の額に黒い魔法陣が現れ、男の身体は徐々に黒く光り輝き、異形の者へと変化していく。 切り落とされた左腕は獣のような形に再生し、右腕は持っていた鞭と同化し、牙や爪はその長さを増し、首からは獣の頭部が生え、身体中は先程の二倍以上に巨大化し、体色は黒く変化し、もはや人と呼べるものでは失くなった。 「合成獣(キメラ)か…ウルフ系の魔物と人の合成らしいな。鞭にも何か混ぜてあるらしいな。…楽しくなって来たよ」 驚いた様子もなく、キメラを観察するカイト。その表情は新しいおもちゃを与えられた子供の様だった。 この世の物とは思えない、鳴き声をあげるとキメラはカイトに、自身の持つ人を殺すには十分過ぎる程の牙で飛び掛かった。
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