1.炎の決意

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照り付ける陽射し、辺り一面に広がる砂漠。茹だるような暑さの中、それを気にするそぶりもなく、歩く一人の少年。 燃えるような紅い髪に整った顔。瞳も髪と同じく紅い。腰に帯刀した黒い刀は、日の光を反射して怪しく輝く。 「この辺りか…」 そう呟くと、ポケットから白い小さな丸い玉を取り出し、中央の赤いボタンを押して、青い空に投げた。 無言で砂漠のある一点を指差し魔力を集中させる。 <炎魔法エクスプローション> 少年が指差した地面には赤い魔法陣が展開され、火柱を立て爆発した。凄まじい音と風が起こり、辺りの砂が舞い上がる。それと同時に巨大な生物が砂漠から飛び出した。 目がなく、頭部には人を軽く飲み込める程の巨大な口がある蛇状の魔物サンドワーム。茶色いゴツゴツした皮膚は非常に固い事で有名。不用意に近付いた旅人等を捕食する危険な魔物。 「貴様に恨みはない…だが死んでくれ…」 静かに刀を抜く少年。漆黒の刃が日の光を浴び、怪しく輝く。 少年の何倍もの大きさのサンドワームが少年を飲み込もうと口を開き、飛び掛かって来ても少年は冷静に刀を構えるだけだった。まさに飲まれるその瞬間少年は小さく呟いた。 「…大陸剣技六ノ型"鎌鼬"」 少年が刀を一降りし、全ては終わった。刀から発せられた巨大な風の刃は、サンドワームの命を絶つには十分だった。
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