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広い砂漠の真ん中で睨み合う二人、互いの瞳に互いを映し出す。
「ふっ…今の俺じゃ…殺せないのは事実だな」
独り言の様に呟き、刀を鞘に納めるカイト。レンはその様子を見ながら笑みを浮かべる。
「少し話しをしよう。久しぶりに出会ったんだから…あの岩の影にでも座って…」
レンはそう言いながらカイトの手を握り、近くの岩の影に連れて行く。手を握られて、驚いた表情をしたカイトだったが、レンの白く細い手を握り返し、歩き出した。
砂漠には珍しく大きな岩があり、その為大きな影がある。恐らくサンドワームの巣のようなものだったのだろう。
「レン…なぜここにいるんだ?」
岩影に座った途端カイトが切り出す。砂漠の日影と日なたの温度差は大きく、冷えた砂と暖かい空気で心地良い状態になっている。
「さっきも言ったじゃないか…君がここに居るからだよ」
「真面目に答える気は無いのか…まぁいい所詮俺らは敵同士だからな」
敵同士と言う言葉に反応して、肩をビクっと震わせたレン。一瞬見せた寂しげな表情は何を意味してるのか。
「ねぇ…カイト。君は私を殺せると言った…でも私には君を殺す覚悟はない…」
今にも泣きそうな表情で語り出すレン。
「今からでも…遅くない。教団に入ってくれないか?そしたら君を殺さなくって済む…」
「…無理だ。もう後戻りは出来ない…それに教団は世界の敵だ」
首を横に振り、真っ直ぐレンを見つめるカイト。
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