1.炎の決意

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互いに何も言葉を発せず時は流れる。吹き荒れる風は砂を舞い上がらせる。 「悲しいね…もっと違う形で出会いたかった…」 無理に笑顔を作り、自分の唇をカイトの唇に重ねる。長い長い口づけ、それが終わるとレンはカイトに背を向けた。 「次に会う時はどちらかが消える時…楽しみにしてるよ。ありがとう、そして…さようなら」 振り返る事もせず、砂漠を歩くレン。カイトの視界からレンが消えた時、レンに近付く人影が一つ。 「報告します。レン=アイシス様、サンガルドの街にはカイト=ロンドは居ませんでした」 教団の制服を着ている兵士がレンの前に現れ敬礼し、状況を報告する。 「残念…この作戦は失敗だ。退くぞ」 「しかし私は先程レン=アイシス様と一緒に居るカイト=ロンドを目撃し……ぐっ……」 「好奇心は必ずしも良いものではないんだ…己の死でそれを学べて良かったな」 冷たい表情で報告してきた者を見つめるレン。その瞳に映るのは憐れにも無数の氷の刃に全身を貫かれ、既に死んでいる教団の兵士だった。 「放置していれば、サンドワームが処理してくれるかな…」 そう言い残し、亡きがらをその場に残し、サンガルドの街の方に歩くレン。彼女にとって自分の邪魔になる人間を排除することは造作もない。
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