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一人砂漠に取り残されたカイト。立ち上がり、砂を払い、歩き始める。
「あの表情で、あんな事言われてもな…説得力のない女だ」
一言呟き、サンガルドの街の方に歩き出す。広い砂漠の彼方に朧げに見える街の外壁。隣接する砂漠に潜む魔物を防ぐ為に造られた巨大な壁。
「…死体?教団の兵士か…氷の刃が全身に刺さっている。レンがやったのか…」
目の前に転がる男の死体に目をやり呟く。一度両手を合わせ、頭を下げ、すぐに死体に背を向ける。強がって見てもまだ16才。人の死体を見て冷静にはいられない。例えそれが他人であっても…。
砂漠に点々と残る、足跡。疲れからかサンガルドの街の近くまで来るには随分時間がかかった。
「…!?焦げ臭い…嫌な予感が…まさか…」
慌てて走り出すカイト。だがサンガルドの街の巨大な門は堅く閉まっており、カイトの侵入を拒む。
「余りこういう事はしたくないんだが…仕方ない」
一瞬表情を曇らせたが、直ぐに右腕に魔力を集中させる。燃える様に真っ赤な魔力に包まれたカイトの右腕。
<炎魔法エクスプローション>
真っ赤に輝く右腕を、金属で出来た巨大な門に当てる。その瞬間凄まじい音と爆風が生じ、門に人が十分に通れる程の風穴を開けた。
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