1.炎の決意

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地獄絵図と呼ぶにそう難くない光景。カイトの視界に入る範囲に動いている者は居なかった。 「一体誰が何の為に……?とにかく生存者を探すか……」 人の死体と瓦礫の山を避けながら、街の中心部に向かって歩くカイト。街の中心にはギルド等がある為、人がいる可能性が高いと考えたからだ。 殺伐とした空気の中、慎重に、だが迅速に中心部に向かう。 しばらく歩くと街の中心部のサンガルド広場に辿り着いた。 広場の人影は三人。黒い軍服を着た男が二人、一人は白髪で刀を持っている、もう一人は赤い髪で鞭を持っている。それと身体中に怪我をした女が一人。 「教団の兵士か……二対一は不利だな。しばらく様子を見よう」 カイトは悔しそうに呟き、物影に身を潜めた。辺りには、崩れかけた建物が多く身を隠すには好都合だった。 ――。 サンガルド広場に佇む人影。白髪の男は無機質な表情で広場に続く道端の瓦礫の山のある一点を見つめている。そして足元には魔法の縄で縛られた女性。辺りは静寂に包まれていた。 「おい!レイ!こいつ殺して良いだろ?いい加減"魔宝具"の在りか吐かねぇぜ!」 静寂に耐え切れず赤い髪の男が声を荒げ、白髪の男に語りかける。 「…興味ないな…勝手にしろ」 レイと呼ばれた白髪の男は着ている黒いコートを翻しながら、眺めていた瓦礫の山の方に向かって歩き出した。
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