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一歩ずつこちらに近づいてくる人影。思わず腰に付けている刀を握り絞める。
近づいてくる白髪の男はカイトと同程度の年齢に見える。しかし纏っている殺気は明らかに次元が違う。無機質な瞳の奥には憎悪が渦巻いているような気がしてならなかった。
ゆっくりとした足どりで、カイトが隠れている瓦礫の前で立ち止まり白銀の剣を鞘から出す。燃え盛る辺りの炎を反射させ、残酷に輝く剣。
白銀の剣からの躊躇のない斬撃が瓦礫に加えられ、カイトの姿が現れる。
目と目が、視線と視線が交差した瞬間、カイトは白髪の男に底知れぬ恐怖を感じ、防衛という動きを忘れた。
白髪の男は、再び剣を振り上げ、躊躇いなく、振り下ろした。
肩に感じる鋭い痛み。温かい液体が滴る感覚。肩を掠った剣はカイトの背後の石壁を紙の様に切り裂いていた。
壁に刺さった剣を引き抜き、一度剣を振り、血を払う。一切無駄の無い動きで剣をしまった。
「…お前には俺の渇きを潤せるのか…」
意味深な言葉を残し、白髪の男はそのままカイトが通って来た道の方へ歩いて行った。
残されたカイトは身体中から吹き出した冷や汗を拭おうとはもせず、その場に崩れる様に座った。
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