卵(プロローグ)

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  「可愛がってあげてね。 特に、温めたりする必要はないから 卵の世話は楽だと思うわ」   「何か、生まれるのか?」   そりゃ、そうよ。 卵だもの…       そういうと、 その子は夜の闇へと消えていった。   「おい!ちょっと待て」    呼び止めると一瞬 振り向いた気配。     「なんで、俺に?」   くすくすっと微かな笑い声がして、   「必要だと思ったから… 私にはもう必要ないから」     そして、本当に行ってしまった。     ちょうど半分に 割れた月の夜だった。  
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