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「いい加減にして下さいよ!!」
ドンッ!という鈍い音と共に、太一は正太に突き飛ばされた。
「ずぶ濡れで帰って来たかと思いきや、今度は幽霊幽霊って…
せっかくの楽しい海が台無しだ。
美幸も怖がってるじゃないですか。全く…そんなんだからダブるんすよ!」
「ちょっ…正ちゃん言い過ぎ…」
美幸の言葉を待たずして、
太一は部屋を飛び出した。
ダブりが悔しいのでは無い。
自分の話を信じて貰えなかったのが哀しいのだ。
あの女に助けられた時、確かに聴こえた
「もう一度会いに来て…」
という小さな囁き。
どうしようも無く胸の中に残ってる。
それに…夢の中に出てくるあの子に…似ていた。
―会いたい。
夏が終わってしまう前に―
それから、太一は霊感アップに力を注いだ。
元来太一の霊感は、ゼロに等しい。
これでは会えないと考えた太一は、
地獄先生ぬ~べ~を全巻読破する事にした。
この特訓は、凄惨を極めた。
次の巻がどうしても見つからず、本屋を30件ハシゴしたり…
間違えてこの前買ったやつをまた買ったり…
時々極楽大作戦も読んだり…
そして一週間後、またあの日本海へと降り立った。
右手には黒い手袋をはめて…
銀杏青心小僧
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