258人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
*…3…*
瀬崎臣(セザキジン)は、タクシーの後部座席で流れるヘッドライトを目で追っていた。
隣には香川絵里子(カガワエリコ)がかなり酔った様子で目を閉じタクシーの窓ガラスに頭を付けている。
なんで、こんな女と同じタクシーなんだよ。
接待の続きとはいえ好みじゃない女を送るのは帰る方向が同じでも気が進まない。
好みではないと言っても容姿が悪い訳ではなくて、
切れ長のはっきりした目に、きちんと束ねた長い髪は清潔感があっていいのだが……。
甘いバラのような香りが少々気になるが、嫌いではなく、はっきり言って苦手なのだ。
『メガネの似合う女教師』を連想させる雰囲気が子供の頃に悪ふざけをして怒らせてしまった担任の先生を思い出させる。
こんなトラウマ?さえなければチャンス!とばかりに酒の力を借りて、このすました淑女面した女を、ホテルにでも連れ込み娼婦のように乱れさせてみたいものだが、横顔を見る度にやましい妄想よりも、ため息ばかり出でくる。
やっぱり……無理だ。
最初のコメントを投稿しよう!