プロローグ【legend of wolf】

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「ふぅ…、さっさとそうしてりゃいいものを……」  夜闇に消えていく二人を見ながら、ゆっくりとリボルバーを戻した。  いや…まったく、毎回こうならこれも楽なんだがな…。  俺は、煙草の火を消し、少女に近づいた。 「おい、無事か?」  俺はしゃがみ込んで、震えている少女の目を見た。  近くで見ると、結構小さく…。天を思い出させてくれる様な雰囲気が辺りを流れていた。  小さな少女はぶるぶると首を何度も上げ下げさせた。 「そうか。んじゃ、適当に安全な場所にまで送る。立ちな」  俺は手を差し伸べた。  そして、少女の姿をした神が俺の手を掴んだ瞬間、一気に立たせた。 「ほら、さっさと来ないと、12時回るぞ…。 場所は森か林辺りで良いか?」 「……………」  少女は一回だけ頷いた。 「そうか。なら行くか」  そう言い、俺は近くに止めてあったバイクに少女の手を引き連れて行った。 「…ねぇ…。 どちて、あたちをたちゅけたの? 今、あたち達がおみゃえ達にどう見りゃれてるにょか、あたちにもわかる。軽蔑、敵視、獲物……。 でも、どちて、たちゅけたの?」  手を繋ぐ神が、初めてそう問いかけた。 「頭の悪そうな喋り方だな…」 「うるたい…。そりぇより、こちゃえて」  俺は少し考えた。  一年も前に自分で決めた事、決意を思い返した。  そして、思いの他軽い神をバイクの後ろの座席に座らせて、少し笑った。 「簡単だ。 これ以上、死ななくてもいい奴らを見殺しにしている事が嫌になっただけだ…」 「ちゃとえ…神でみょ?」 「例え神でもだ」  少女は目を丸くして驚いていた。  だがすぐに、俺よりも上手な笑顔を見せ付けてくれた。 「おみゃえ、面白い人間だね。名前、なんていうの?覚えててあげる」  一服してから行こうと思い、俺は煙草に火をつけ様とした。だが、すぐにライターとタバコをコートの深いところにしまい込み、ハンドルに付いている少し小さめのヘルメットを少女に被せた。 「坂口 凪だ。 しっかり生きろよ……、神」
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