久しい再会

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「南夏っ!」  油蝉の大合唱の最中、いつもの道路で手を振る男。 その男の登場に油蝉はマナー違反だとブーイングを浴びせ、迷惑なことに更に五月蝿くなった・・・油蝉のブーイングを受けながらこの炎天下にあっても尚、涼しげで整った彼の風貌は穏やか・・・僕に対しての嫌がらせとしか思えないその外見は、黒い長髪をオールバックにしてスーツを着込んだものだ。 ・・・あぁ・・・見ているだけでげんなりする。 「・・・炎似・・・お前、いつも暑苦しいね。」  出会い頭に肩を竦めて溜息。手を振る男は無邪気に笑っているが、曲がりなりにも二十歳を迎えた成人性・・・炎似という名までも暑苦しいその男は、暑さを知らないかのようにキョトンとしている。 「うーん?そうかなぁ・・・だって今日は南也さんの命日じゃないか・・・。」  南也とは僕の姉のことで、この炎似の妻だ。因みに僕は炎似の幼馴染兼親友だったりする。僕より二つ年上の炎似と三つ上の姉・・・僕らは家族以上の絆を持っていた。 「例え命日じゃなくっても、お前は南也が死んでからずっと喪服紛いの格好じゃないか。」  キッパリ言った僕を見て、炎似は眉尻を下げた。 この暑さも相成ってか、その時僕はかなりイラついていた・・・夏が嫌いなのだ。暑いから。 「これは俺なりの誠意を表しているんですっ。・・・そう言う南夏だって南也さんが亡くなってから黒い服ばっかだろう?」  子供みたいに口を尖らせて言い返しながら、小走りでやって来た炎似は南夏の隣を歩く。 確かに炎似の言う通りだった・・・僕は南也が死んでから、2年経った今でも姉を偲んで黒服だ。黒いTシャツに黒い半ズボン・・・眼鏡は元から黒縁だったが、お陰で身に付けている物全てが黒だった。
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