5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま。」
「坊ちゃま、お帰りなさい。
何かお飲みになります?」
「ううん、今はいい。
……お父さんは?」
「王室にいると思いますよ。」
「ありがとう、ばぁや。」
――――コンコン
「誰だ。」
「ぼく、ウォルテスです。」
「入りなさい。」
キーーーーー、パタン。
ウォシュトウは窓の外を見つめ、こちらに背を向けていた。
ウォルトは走りより、ウォシュトウの袖を軽く引っ張った。
「お父さん、戦争…始まるの?」
「あぁ。」
「なんで?戦争って、人がたくさん死ぬんでしょ?
僕…そんなのヤだよ。」
「父さんもイヤさ。
でも、他の国から攻められて黙っていては、民衆は守れないのだよ。」
「戦う人も民衆でしょ?
なんで…なんで攻めて来たりなんか…」
ウォシュトウはウォルトの方へ向き直り、片膝をつき、ウォルトの腕をグッと掴み、じっと彼の目を見つめた。
「お前は、この戦争をしっかり見つめていきなさい。
二度と、絶対に起こらない様に、しっかりと。
わかったね?」
「はい、お父さん。」
父の目は真剣だった。
そして、厳しい表情だった。
ウォルトはそんな父の顔を初めて見た。
いつもの優しく抱きしめてくれる父ではなく、
強く鋭い目だった。
それと同時に、彼は、『王』としての責任の重さを、父の背中で感じとれた。
自分がいずれ王になることを、自覚した瞬間でもあった。
最初のコメントを投稿しよう!