戦争

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「ただいま。」 「坊ちゃま、お帰りなさい。 何かお飲みになります?」 「ううん、今はいい。 ……お父さんは?」 「王室にいると思いますよ。」 「ありがとう、ばぁや。」       ――――コンコン 「誰だ。」 「ぼく、ウォルテスです。」 「入りなさい。」   キーーーーー、パタン。   ウォシュトウは窓の外を見つめ、こちらに背を向けていた。 ウォルトは走りより、ウォシュトウの袖を軽く引っ張った。   「お父さん、戦争…始まるの?」 「あぁ。」 「なんで?戦争って、人がたくさん死ぬんでしょ? 僕…そんなのヤだよ。」 「父さんもイヤさ。 でも、他の国から攻められて黙っていては、民衆は守れないのだよ。」 「戦う人も民衆でしょ? なんで…なんで攻めて来たりなんか…」   ウォシュトウはウォルトの方へ向き直り、片膝をつき、ウォルトの腕をグッと掴み、じっと彼の目を見つめた。   「お前は、この戦争をしっかり見つめていきなさい。 二度と、絶対に起こらない様に、しっかりと。 わかったね?」 「はい、お父さん。」   父の目は真剣だった。 そして、厳しい表情だった。 ウォルトはそんな父の顔を初めて見た。 いつもの優しく抱きしめてくれる父ではなく、 強く鋭い目だった。   それと同時に、彼は、『王』としての責任の重さを、父の背中で感じとれた。   自分がいずれ王になることを、自覚した瞬間でもあった。
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