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「ウォシュトウ様!!ウォシュトウ様!!」
側近のハレスが息を切らして、王室へ飛び込んできた。
「何事だ。」
「す、すみません、しし失礼しました。ハァハァ
敵の戦隊…戦隊司令長から電報が届きまして…ハァハァ」
「内容は?」
「は…はい…ハァハァ。
ごほっごほっ。
『明後日、ラズリー国に上陸する。先日、貴ラズリー国国王よりいただいた和解案を受諾することはない、そう心得ていただきたい。よって、我がヒッチーナ国は、ラズリー国を我が国にすべく、ここに、宣戦布告とした。』と、あります。」
「直ちに全戦隊の準備をさせろ。」
ウォシュトウは机に両手をつき、うなだれるしかなかった。
戦争だけは避けたかった…。
ウォルトが王室に入ろうとすると、ハレスがすごい勢いで部屋から飛び出してきて、ウォルトにも気づかず走って行った。
「お父さん、ついに始まるんだね…」
「………。
これ以降、この王室には入ってはいけない。
お母さんと離れにいなさい。
私がいいと言うまでは、本城にも立ち入ってはいかん。
わかったな。」
「お父さんは?」
「いいから、早く行きなさい。」
ウォルトは目も合わせずに言った父が、心配でならなかった。
泣くでもなく、途方に暮れるでもなく、重い重い重圧と悲しみに耐える様なその背中が。
王室を出て、目の前にある窓の、ステンドガラスの透明な部分から見える中庭を、
儚げに見つめた。
そんなウォルトの脳裏に一瞬、二度と父さんと会えないのでは?という想いが走った。
ウォルトは気のせいだと思いたくて、離れまで一目散に走った。
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