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戦争が始まり、3週間がたった頃だった。
「坊ちゃま、食事の時間ですよ。」
「はぁい。あ、僕も手伝うよ。」
「ありがとう。でも、離れを出てはいけませんよ。」
「………。」
ウォルトは、外で何が起きているのか見たかった。
いや、見なければいけないと、何か使命感の様なものにかられていた。
キッチンへ行く振りをして、離れとつながるトンネルを抜け、街が見渡せる鐘の塔の天辺まで上がった。
「…………………!!!!!!」
ウォルトは街を見渡して…
声を失った。
微かにしか見えるはずのない町が、赤々と燃えているのが、よくわかった。
煙がたち、炎が這うようにして、家々を飲み込んでいる。
空も戦争の残酷さを嘆くかのごとく、黒々とした雲を沸き立たせていた。
「し、信じられない…。これが…これが動物(ひと)のすることなのか…!?」
ウォルトの心の中で悲しみの鐘が鳴り響いていた。
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