Last words -side G-

4/4
前へ
/31ページ
次へ
『なあ…帰ったら、何してくれる?』 もう一言も聞き逃すまいと、意識を集中させる。 愛しい、武の声。 嬉しい時 悲しい時 辛い時 幸せな時… いつも…聞いていた、声。 「まず、殴る」 『はは、それで?』 「…その前に、お帰りって言う」 『うん』 束の間の、幸せな時間。他愛ない会話が、嬉しかった。 「そんで…キスしてやる」 『隼人から?』 「…言わせんな」 『あははっ』 同時に言葉が切れ、一瞬、間が空くと。そろそろ、終わりに近付いてる事が、感覚で分かった。 「…武」 『ん…?』 もうだいぶ瞼が下がってきてる。早く、早く言わなければ… 「Ti amo」 『ん、ああ…ありがとな』 「それから… Arrivederci」 その言葉を最期に…オレはぱたりと横に倒れ、目を閉じた。意識が途切れる直前、手放した携帯の向こうで、人の倒れる音が、聞こえた気がした。 (次に目が覚めたら、武に…お帰りって、言おう) ――最高の、笑顔で… end...
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加