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あるところに、犬がいました。黒い立派な犬はにんげんの家にひもでつながれていました。
すると塀の上を一匹の白い猫が歩いてこちらにやってきます。
犬は吠えました。
「こら、そこのお前、ここにいったい何の用だ」
猫はうるさそうにちらと犬の方を見てこう言いました。
「私が何をしようと私の勝手でしょう」
「そういうわけにはいかない」
犬はこの家の番犬なのです。門番なのです。
「ここを通りたくば通行許可書を提出しろ」
「なにそれ?面倒くさいからやだ。あ、私用ができたから。じゃあね」
そう答えると猫は犬の届かない辺りの塀の上を走り、飛び降り、それはもうしゅたっと着地してみせたものでした。
「こら、待て!通行許可書を出すんだ!さもないと……」
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