第一声

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ある晴れ渡った空の下、一人の少年は走っていた。   彼の名は間宮 怜。   狭い路地裏を誰に追われるでもなく走って行く。   「黙れぇっ!うるせぇっ!」   一人でそんな事を言いながら。   否、一人ではなかった。   彼の通学路でもある、路地裏には大量のネコが居た。   大量の猫に囲まれる中、頭を両手で掴みながら怜はついにしゃがみ込んでしまった。   「五月蠅い五月蠅い五月蠅いっ!お前ら喋るんじゃねぇ……っ!」   悲痛な声は誰かに届く事も無く、消えていった。       この物語の主人公、怜は何と驚いた事に猫の声を聞くことが出来る。   とても素敵な能力だ……猫好きにとっては。   皮肉な事に怜は大の猫嫌いだ。   猫の顔を見るだけで寒気を感じるのに、元来猫を引き寄せてしまう体質らしく、更には猫の声まで聞こえてしまう。   こんな最高で最悪な体質と能力を授かってしまったのが怜だ。       さて、話は変わるが、路地裏で体力を使い果たした怜はよろめきながらも家へと帰った。   そう、怜が路地裏を走っていたのは帰宅する為だったのだ。
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