第二声

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蘇る記憶。   それは忘れもしない。   7年前の出来事――     あの日、怜は遠足帰りだった。   楽しい楽しい遠足も、家に着く頃になっては疲労感がドッと滲み出てくる。   それでも怜は早く帰ろうと、小さな足を精一杯動かした。   両親に早く楽しかった遠足の話を聞かせたいから。   家に着く、最後の曲がり角を曲がった瞬間、怜が見たのは   両親の笑顔では無かった。   「シーナぁぁぁっ!」   黒猫、シーナがトラックの前に飛び出し、   シーナを死なせまいと、飛び出した母親が   シーナの代わりに、   死ぬ瞬間だった。   飛び散る血とひしゃげた身体が嫌に鮮明に記憶に残されている。   怜の母親は即死だった。   その三日後、後を追うように怜の父親が自殺した。   母親の墓の側で、手首を切ったそうだ。   その日から怜は独りぼっちになった。       怜はガバリと勢い良く起き上がった。   体中が嫌な汗でベタベタしていた。
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