第二声

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「ヤな夢……っ!」   それは母が死んだ日の夢。   胸に残る嫌な感じを引き摺りながら怜はベッドから降りた。   身仕度をしながら考えにふける。   母が死んだ日、父が言っていた言葉があった。   「シーナの所為、かぁ……。」   事故を目の当たりにした怜はそんな事、思いもしなかった。   しかし、心の何処かで同意していたのか、その日からシーナが、そして猫が日に日に嫌いになっていった。   生まれつき持っていた能力も疎ましくなり、今では誰かに譲りたいほどになってしまった。   「昔は大好きだったのになぁ……。」   「ほぅ、貴様にも想い人が居たのか。」   「いや、恋は9歳以来してねぇよ……ってシーナ!?」   怜は漸く他者の存在に気付き、足下に目をやった。   そこにはまるで闇を切り取ったような猫が一匹。   「考え事は良いがな。もう行かんと遅刻するぞ。」   シーナは壁の時計を顎で示しながら忠告した。   すると怜は半ば青ざめながら鞄を担いだ。   「ヒィィっ!遅刻するーっ!」   バタバタと慌ただしく家を出た。
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